食生活を見直して便秘を改善したい

食生活を見直して便秘を対策したい

目次

    60代男性の相談

    新型コロナウイルス感染予防のために、以前よりも外食を控えて家で食べるようにしました。妻が作ったり、スーパーで惣菜や弁当を買ったりしています。妻も私も便秘気味で、これを機に食生活を見直そうと思っているのですが、便秘対策におすすめの食材や食べ方などがあれば教えてください。
    (60代・男性)

    中島先生 監修医ワンポイント解説

    便秘対策のために食生活を見直すのはいいことですね。食生活が排便に与える影響は大きく、そもそも現代人の食生活は便秘を招きやすくなっています。そのことを理解して、食物繊維を多くとる、よく噛んで食べる、水分をしっかりとる、などを習慣化するようにしてください。よかれと思っても、極端な食生活にしないことも大切です。

    少ない食事量、食物繊維の不足など、現代人の食生活は便秘を招きやすい

    ご存じの通り、便のもとは食事です。そのため、食べる量が少なく、便のもととなる材料が足りていなければ、便秘の原因になってしまいます。ダイエットをしている方もいると思いますが、体重の減少とセットで便秘になってしまうことは珍しくありません。ですから、食生活を見直して便秘対策に取り組むのであれば、まずは食事量をきちんととるようにしてください。

    そもそも現代人は、白米や加工食品など精製された食品を食べる機会が多く、食物繊維の摂取量も不足気味です。食べたものの多くが便の材料にならずに腸で吸収されてしまうため、食事そのものが便を作りにくくなっているとも言えます。そのうえ、ダイエットで全体の食事量を少なくしたり、油を一切とらないようにしたり、1日1食にするなど食事回数を減らしたりするわけです。さらにシニアの場合は、日々の活動量が低下するため食事量も減少しがちです。また、歯が悪くなると柔らかいものばかり食べるようになり、栄養が偏り、食物繊維の摂取量もますます不足してしまいます。このような食生活では、便秘を招きやすいといえるでしょう。
    「現代人の食生活は便秘を招きやすい要因がいっぱい」イラスト

    便秘対策には、「加熱処理」と「よく噛むこと」がポイント

    年齢とともに食が細くなるのは仕方がないですが、便秘対策のためには、意識して食事量を増やすことと食物繊維をとることが大切です。軽症の便秘の方なら食物繊維を多くとる食生活を続けるだけでも、便秘対策が十分に期待できます。食物繊維は、65歳以上なら1日あたり男性は20g以上、女性は17g以上とることが推奨されています*1。キャベツなら1玉、ニンジンなら6本、リンゴなら4個程度でしょうか。それなりの量ですが、便秘治療によって症状が改善した方の話を聞くと、食物繊維を多くとるコツは、「生」ではなく「加熱処理」をして食べることだそうです。冬は鍋の美味しい季節でもあるので、食物繊維を多く含んだ食材をたくさん入れて鍋を楽しんでみてはいかがでしょうか。
    「鍋」の写真
    ちなみに、食物繊維には水溶性(便を軟らかくする)と不溶性(便のかさを増やす)があります。便秘の方が不溶性の食物繊維をとりすぎると便秘症状が進んでしまうおそれがありますが、水溶性ばかりだとかなりの量をとらないとかさが増えないため、どちらもバランスよくとることが大切です。また、食物繊維を1食でとろうとすると、お腹が張り不快感が生じてしまいます。3食で一定割合ずつとるようにしてください。

    加えてお伝えしたいのは、噛むことの大切さです。シニアの方の中には、歯が悪いためよく噛んで食べない方もいると思います。例えば、ゴボウは食物繊維を多く含んだ噛み応えのある食材ですが、小さく刻んで調理されていると、よく噛まずに飲み込んでしまっていることがよくあります。それでは消化不良になり、胃腸に負担をかけてしまいます。噛み応えのある食事をよく噛んで食べることは健康的な食生活の基本ですが、便秘対策においても同様です。本人は噛んでいるつもりでも、実際は飲み込んでいることもあるため、形がなくなるぐらい噛むようにしてください。

    極端な考え方や行動はやめよう

    相談者の方はスーパーで惣菜やお弁当を買っているとのことですが、商品を選ぶ際にラベルをチェックするのもおすすめです。食物繊維量を確認しつつ、野菜や海藻などが多く入っているものを選ぶようにしてください。また、便秘対策には揚げ物などの油っこいメニューを選ぶことも大切です。カロリーオーバーを気にして油を避けるのではなく、カロリーに気を配りつつ日常的に油をとるようにしてください※。適度に油を使った料理を食べると、胃腸の動きがよくなるからです。

    「いつもスチーム調理なので油は一切使いません」と話す患者さんもいますが、極端な考え方や行動はよくないです。卵がいいと聞くと卵を毎日3個も食べる、果物がいいと聞くと毎朝メロンを1個食べる、油はよくないと聞くとオリーブオイルを含めて油を一切とらない…。このような食生活では、便秘以外の病気も心配です。「極端」ではなく「バランス」「適度」「ほどほど」を心がけてください。
    ※脂質制限など食事制限を受けている方は主治医に相談するようにしてください。

    喉が渇いていなくても水分をこまめにとることも大切

    便秘対策では食事の量・質とともに、水分摂取も重要です。シニアの男性の中には、前立腺肥大症によって夜間に何度もトイレに行く方がいると思います。それを避けるため夕方ごろから水分摂取を控える方もいますが、それでは便が硬くなり、排便が困難になってしまうことも考えられます。トイレの回数を減らしたいという理由で、水分摂取を減らすのはよくありません。

    また、シニアは加齢により、喉の渇きを感じる中枢(口渇中枢)が鈍感になります。軽い脱水状態になっていても喉の渇きを感じないこともあり、皮膚が乾燥したり、便が硬くなったりと、脱水に伴う症状がいろいろと出てきます。そのためシニアは、喉が渇いていなくても水分をとることが大切です。私の場合は、午前中の診察の際に、500mLのペットボトル1本を3時間かけてゆっくり飲むようにしています。一度にたくさん飲むと30分ぐらいでトイレに行きたくなりますが、この飲み方だと診察中にトイレに行きたくなることはありません。体を水でじんわりと潤わせるように、少しずつ何回にも分けて摂取する飲み方を、ぜひ試してみてください。
    「喉が渇いていなくてもこまめに水分を取ろう」イラスト
    *1 厚生労働省, 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書, P.165
    https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf(2020年10月10日閲覧)

    晩酌のおともに水分摂取を

    毎日晩酌をするシニアの方も多いと思いますが、お酒と一緒に水分も十分にとることが大切です。お酒を飲むと脱水状態になりやすく、便が固くなって便秘症状を強めてしまうことがあるからです。例えば、ビールは利尿作用が強く、ビールを大瓶1本飲むと1本分以上の尿が出ると言われています。また、上でも書きましたが、シニアになると喉の渇きに気づきにくくなります。そのため、とくに晩酌をする方は、喉の渇きに関係なく必ず水分も一緒にとるようにしてください。

    病院のイラスト

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    監修者(中島先生)

    監修

    横浜市立大学大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室 中島 淳 先生 

    横浜市立大学大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室 主任教授、診療科部長。医学博士。
    1999年から2001年までハーバード大学客員准教授を務め、腸管免疫の研究にあたる。医療従事者向けの「慢性便秘症診療ガイドライン」作成メンバーとして尽力し、海外の便秘薬や最先端治療に精通。
    ※2022年12月現在の情報です。

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